最低賃金制度とは
最低賃金制度とは、「最低賃金法」に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
※最低賃金額を現行より3%以上や30円以上、1,000円にするとは1.0時間あたりの時間給のことです。
賃金は「通貨」で、直接労働者にその全額を支払わなければならない。詳細は「労使協定」により具体的に別途定めることになります。
最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。(時効期間5年間)
また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、「最低賃金法」に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、「労働基準法」に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
- 最低賃金法 第4条 第1項・第2項
- 労働基準法 第24条 第1項
最低賃金の種類
(1)地域別最低賃金
「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
「地域別最低賃金」は、・・・
[1] 労働者の生計費
[2] 労働者の賃金
[3] 通常の事業の賃金支払能力
を総合的に勘案して定めるものとされており、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。
(2)特定最低賃金
「特定最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。
全国で228件(令和2年4月1日現在)の最低賃金が定められています。この228件のうち、227件は各都道府県内の特定の産業について決定されており、1件は全国単位で決められています(全国非金属鉱業最低賃金)。
※詳しくは、都道府県労働局又は最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
最低賃金の適用される労働者の範囲
「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。⇒パートタイマー・アルバイト・臨時・嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。
「特定最低賃金」は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。⇒18歳未満又は65歳以上の方・雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方・その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。
なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、次の労働者については、「使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例」が認められています。
(1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
(2) 試の使用期間中の方
(3) 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
(4) 軽易な業務に従事する方
(5) 断続的労働に従事する方
なお、「最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者」は、最低賃金の減額の特例許可申請書2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出してください。
※詳しくは、都道府県労働局又は最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
派遣労働者への適用
「派遣労働者」には、派遣先の最低賃金が適用されますので、派遣労働者又は派遣元の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。
最低賃金の対象となる賃金
「最低賃金の対象となる賃金」は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが「最低賃金の対象」となります。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
※詳しくは、都道府県労働局又は最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
最低賃金額以上かどうかを確認する方法
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2) 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)
(3) 月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
※詳しくは、都道府県労働局又は最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
そのほか
最低賃金の周知義務
使用者は、「最低賃金の適用を受ける労働者の範囲」及び「これらの労働者に係る最低賃金額」、「算入しない賃金」並びに「効力発生年月日」を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。
参考) 効力発生「年月日」は2022年10月1日となります。
「最低賃金」改訂の話題はマスメディアなどで耳にしますが、総務部門や人事部門などに携わる方以外は詳細に知ることはなかなかないと思います。
働く労働者にとっては「賃金は生活の基盤となるお金」ですので「就業規則」など、労働基準法に準ずる社内規程で「賃金規程」などは興味をもって学ばれた方が良いと思います。分からないことがあれば専門部門に恥ずかしがらずに積極的に尋ねるようにしましょう。これは大切なことだと思います。
私も皆さんと一緒に再勉強します。
記:桃太郎
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