コンプライアンスとは企業でよく耳にする言葉です。また、社内規程などでコンプライアンス規程やコンプライアンス委員会規程などを提示しているところは多数ありますが、コンプライアンスとは言っても「法的遵守」のこととある程度分かっていてもどのようなことをどのような法律で確認していれば大丈夫なのかを知っている方は少ないのではないでしょうか。
また、法律や地方自治法は状況によりよく改定されますので常にアンテナを張っていないと労働基準監督署の臨検監督の際に指摘され、厄介な手続きをした上に給与に関わるような事案だと5年間も遡及しなければならない場合もありますのでご注意ください。
今回は厚生労働省が公開しているコンプライアンスに関わる個別項目を簡単に列挙しますのでチェックしてご参考にしていただければ幸いです。
募集や採用活動に関するもの
適正に採用する
公正な採用選考
本籍や家族構成や家族の勤務先や現住所など採用面接者の適性・能力に関係のないことを記載させたり、戸籍謄(抄)本を提出させてはならない。
また、思想信条(尊敬する人物など)を尋ねることもひかえる方がよい。
・関係法令等:募集内容の的確な表示などに関して適切に対処するための指針
募集要項
従業員を採用する場合は年齢制限を設けてはならない。
・関係法令等:労働施策総合推進法第9条
雇用保険資格取得(1)
社員、パート、アルバイトなどに関係なく、所定労働時間が週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある方については、すべて雇用保険に加入させなければならない。
・関係法令等:雇用保険法第6条第1号~2号
雇用保険資格取得(2)
雇用保険に加入させなければならない方を雇入れた場合、雇入れた翌月の10日までに管轄ハローワークへ雇用保険被保険者取得届の提出をしなければならない。
・関係法令等:雇用保険法第7条、雇用保険法施行規則第6条
性別による差別の禁止
募集・採用の対象を男性又は女性のみとすること、男女で異なる条件を付けること、男女のいずれかを優先すること等、募集及び採用の手続きにおいて男女異なる取扱いは禁止とする。
・関係法令等:男女雇用機会均等法第5条
労働契約書を個別に締結する
労働条件通知書など交付
労働者と雇用契約を結んだ際(採用した際)、賃金に関する事項、始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無など法定事項について労働条件通知書等書面の交付により明示しなければならない。
関係法令等:労働基準法第15条
有期労働契約の更新の有無明示
有期労働契約を結んだ際の労働条件の明示において、契約更新の有無等について明示しなければならない。
関係法令等:労働基準法第15条
無期転換ルール
平成25年4月1日以降に締結した同一使用者との間の有期労働契約が、反復更新されて通算で5年を超えた場合は、労働者の申込みにより、期間の定めのない契約(無期労働契約)に転換する。
関係法令等:労働契約法第18条
無期転換ルール[特例]
5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後に有期契約で継続雇用される労働者について、事業主が一定の適切な雇用管理を実施することとして申請し、認定された場合は、無期転換ルールの特例が適用される。
労使協定後に労働局への届け出受理が必要である。
関係法令等:専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法
パートタイム・有期雇用労働者への労働条件書の交付
事業主は、パートタイム労働者(1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者)及び有期雇用労働者(期間の定めのある労働契契約を締結している労働者)の雇入れ・契約更新の際は、「昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口」を文書の交付等により明示しなければならないことや、実施する雇用管理の改善措置(賃金制度、教育訓練、福利厚生施設、正社員転換推進措置等)の内容を説明しなければならない。
※パートタイム労働法では短時間労働者(パートタイム労働者)を対象としていましたが、令和2年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され(中小企業における適用は令和3年4月1日)、法の対象となる労働者に有期雇用労働者が含まれました。
関係法令等:パートタイム・有期雇用労働法第6条、第14条
健康・安全な就労
雇用時の健康診断
常時使用する労働者を雇い入れるときは、雇入時の健康診断を行わなければならない。
関係法令等:労働安全衛生法第66条
雇用時の安全衛生教育
労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、従事す
る業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行わなければならない。
関係法令等:労働安全衛生法第59条
安全配慮義務
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない。
関係法令等:労働契約法第5条
保険によるセーフティネットの構築
労働保険の加入義務
労働保険(労災保険と雇用保険の総称)は、農林水産の事業の一部を除き、労働者(パート、アルバイトを含む)を一人でも雇っている事業主に、加入が義務付けられている。
関係法令等:労働保険徴収法第2条~4条
労働保険事務組合制度
労働保険事務組合は中小企業事業主に代わって労働保険事務を行う団体です。事務処理を委託すると事務の省力化、労働保険料の分割納付、事業主等が労災保険に加入できるなどの利点がある。
関係法令等:労働保険徴収法第33条
労災保険の特別加入制度
労災保険が適用されない方(事業主・役員、家族、一人親方、農業従事者等)について、労働保険事務組合などの団体を経由して申請、承認を受ければ労災保険に特別加入できる。
関係法令等:労災保険法第33条~36条
雇用保険資格取得(1)
パート、アルバイトなどの身分に関係なく、所定労働時間が週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある方については、全て雇用保険に加入させなければならない。
関係法令等:雇用保険法第6条第2~3号
雇用保険資格取得(2)
雇用保険に加入させなければならない方を雇入れた場合、雇入れた翌月の10日までに管轄ハローワークへ雇用保険被保険者取得届を提出しなければならない。
関係法令等:雇用保険法第7条、雇用保険法施行規則第6条
職業紹介事業・労働者派遣事業
職業紹介
職業紹介事業を行おうとする際には、それが手数料等を徴収しない無料のものであっても厚生労働大臣の許可を得なければならない。
関係法令等:職業安定法
労働者派遣
労働者派遣事業を行おうとする際は、厚生労働大臣の許可を得なければならない。
関係法令等:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等 に関する法律第5条
労働者派遣の適用除外業務
港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院等における医療関連業務(一部例外あり)について、労働者派遣事業を行ってはならない。また、労働者派遣を受けた際は、港湾運送業務、建設業務、警備業務、病院等における医療関連業務(一部例外あり)に従事させてはならない。
関係法令等:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第4条
外国人労働者への適切な管理
外国人雇用状況の届出
事業主は、外国人労働者を雇用した場合又は雇用している外国人労働者が離職した場合は、その者の氏名、在留資格等を管轄のハローワークに届出しなければならない。
関係法令等:雇用施策総合推進法第28条
外国人労働者を雇用したときの労働保険加入
事業主は、外国人労働者を雇用した場合は、原則労働保険に加入させなければならない。
関係法令等:労働保険の保険料の徴収等に関する法律第2条、雇用保険法第7条
就労時に関するもの
労働条件の適切化
所定労働時間
所定労働時間は1日8時間以内、週40時間以内としなければならない。(商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で労働者数が10人未満の事
業場は特例措置により、法定労働時間が週44時間となる)
関係法令等:労働基準法第32条
労働時間の把握
実際の労働時間について、始業・終業時刻を確認し、その時刻を労働時間として記録しておかなければならない。
関係法令等:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン労働安全衛生法第66条の8の3
休日
休日は少なくとも毎週1日以上与えなければならないこ。
関係法令等:労働基準法第35条
時間外・休日労働協定
時間外労働、休日労働を行う際、事前に労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。(36協定)
関係法令等:労働基準法第36条
時間外労働限度基準
時間外労働の労使協定を締結する場合、時間外労働の上限時間を1か月45時間以内・1年360時間以内にするなど、労働基準法で規定されている時間以内としなければならない。
(平成31年4月1日施行。中小企業への適用は令和2年4月1日)
関係法令等:労働基準法第36条
労使協定の従業員代表者
時間外労働・休日労働の労使協定の当事者である労働者の過半数を代表する者は、「監督又は管理の地位にある者でないこと」「投票、挙手等の方法による手続きで選任すること」「使用者の意向に基づき選出された者でないこと」が必要である。
関係法令等:労働基準法施行規則第6条の2
過重労働による健康障害防止措置
時間外労働、休日労働の時間数の合計が月45時間を超えないようにすることが求められている。(過重労働による健康障害を防止するため、実際の
時間外労働時間数を月45時間以内にするよう努めてください。)
関係法令等:過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等
過重労働・医師(産業医)による指導
時間外労働、休日労働の時間数の合計が月80時間を超えた場合は、医師による面接指導等労働者の健康管理に係る措置を講じなければならない。
関係法令等:過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等
時間外労働・休日労働の割増賃金
時間外労働・休日労働を行わせた場合、それぞれ2割5分増、3割5分増以上の割増率で割増賃金を支払うこと、また、午後10時から翌午前5時までの時間帯(深夜業務の時間帯)の労働に対して2割5分増以上の割増率で割増賃金を支払うこと、時間外労働時間数が月60時間を超えた部分は5割増以上の割増率で割増賃金を支払わなければならない。但し、中小企業については、時間外労働時間数が月60時間を超えた部分に対する割増率(5割増以上)の適用が令和5年3月31日まで猶予されている。
関係法令等:労働基準法第37条
年次有給休暇の付与
パート労働者、アルバイト労働者を含め、6ヵ月以上継続勤務し、出勤率が8割以上の労働者に対して、年次有給休暇を付与しなければならない。(年次有給休暇の取得に際し、精皆勤手当の減額、賞与による査定など不利益な取扱い
はできない)
関係法令等:労働基準法第39条・第136条
年次有給休暇の時季指定義務
年次有給休暇が10日以上付与される労働者を対象として、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、日を指定して年次有給休暇を取得させなければならない。(5日のうち、労働者の請求や計
画年休により付与した場合は、その与えた日数分については時季指定義務はなく、また、することもできない)
関係法令等:労働基準法第39条・第136条
年休取得のための環境
年次有給休暇の計画付与制度の導入、取得しやすい職場の雰囲気づくり等、年次有給休暇を取得しやすい環境整備を行うことが求められている。
関係法令等:労働時間等見直しガイドライン
就業規則
労働時間、休憩、休暇、賃金の支払い方法など法定事項について記載した就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届出しなければならない。
(パート労働者等を含む労働者数が10名以上の事業場は届出が必要である)
関係法令等:労働基準法第89条
就業規則等の周知義務
就業規則、時間外労働・休日労働に関する労使協定、労働基準法の要旨など法令で定められた事項を作業場の見やすい場所へ掲示する等により労働者に周知しなければならない。
関係法令等:労働基準法第106条
減給の制裁限度(範囲)
減給処分する場合、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと、また、総額が一賃金支払期における賃金総額の1割を超えてはならない。
関係法令等:労働基準法第91条
労働条件の変更
労働条件を変更する際、変更内容について労働者から個別に合意を得る必要がある。
関係法令等:労働契約法第8条
最低賃金
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならない。
関係法令等:最低賃金法
労働条件等関係助成金
雇用関係助成金
労働災害
会社内での負傷
会社内(敷地内を含む)での負傷は、私的行為が主原因である場合を除いて、仕事中でなくても多くの場合労災保険が適用される。
関係法令等:労災保険法第1条
労働保険の休業補償
労災保険からの休業補償は休業4日目から給付されますので、3日分は会社で補償しなければならない。(通勤災害は除く。)
関係法令等:労災保険法第14条、労働基準法第84条
労災保険の費用徴収
労働保険料未納期間中の労災事故については、保険給付に要した費用の全部又は一部を事業主から徴収することになっている。
関係法令等:労災保険法第31条
労働者死傷病報告
労働者が労働災害その他就業中等における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
関係法令等:労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条
男女均等労働
配置等における性別を理由とする差別禁止
配置(業務配分、権限付与等を含む)、昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職勧奨・定年・解雇・労働契約の更新など、雇用管理のあらゆる場面において男女のいずれかを排除すること又は優先すること等男女異なる取扱いをしてはならない。
関係法令等:男女雇用機会均等法第6条
母性健康管理に関する措置
事業主は、妊娠中・出産後の女性労働者の保健指導・健康診査を受けるための時間の確保及び健康診査等で医師等から受けた指導事項を守ることができるために必要な措置(①妊娠中の通勤緩和、②妊娠中の休憩(休憩時間の延長、回数の増加、時間帯の変更)、③症状等に対応する措置(作業制限、勤務時間短縮、休業等))を講じなければならない。
関係法令等:男女雇用機会均等法第12条、第13条
育児休業制度
労働者は申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間(両親ともに育児休業をする場合は、子が1歳2ヶ月に達するまでの間に1年間)、また、保育園に入所できない等一定の事情がある場合、1歳(又は1歳2ヶ月、1歳6ヶ月)までの育児休業に引き続いて(又は育児休業中の配偶者と交替して)1歳6ヶ月(2歳)に達するまでの間育児休業を取得できる。(一定の要件を満たした期間雇用者も対象です。また、配偶者が専業主婦(夫)の場合も取得できます)
関係法令等:育児・介護休業法第5条~第9条の2
介護休業制度
労働者は申し出ることにより、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族1人につき、3回まで、通算して93日間の介護休業を取得できる。(一定の要件を満たした期間雇用者も対象です。)
関係法令等:育児・介護休業法第11条~15条
育児・介護休業の申出等に対する通知
事業主は、育児休業や介護休業の申出がなされたときは、必要な事項(①休業申出を受けた旨、②休業開始予定日・休業終了予定日、③休業申出を拒む場合には、その旨及びその理由)を書面等により速やかに労働者に通知しなければならない。
関係法令等:育児・介護休業法第5条、第11条 同法施行規則第5条、第23条
子の看護休暇・介護休暇制度
労働者は申し出ることにより、小学校就学前の子の病気やけがの世話、予防接種等のための看護休暇を、また、要介護状態にある対象家族の介護、その他の世話をするための介護休暇を、それぞれ1年につき5日(子又は対象家族が2名以上の場合は、年10日)を限度として1日単位又は半日単位で取得することができる。
※令和3年1月1日より時間単位で取得できるようになりました。
関係法令等:育児・介護休業法第16条の2~第16条の7
育児・介護のための所定外労働の免除
3歳に満たない子を養育する労働者又は要介護状態にある家族を介護する労働者が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
関係法令等:育児・介護休業法第16条の8、第16条の9
育児・介護のための労働時間外・深夜業の制限
小学校就学前までの子を養育する労働者又は要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合は、1か月24時間、1年間150時間を超える時間外労働及び午後10時から午前5時までの深夜労働をさせてはならない。
関係法令等:育児・介護休業法第17条~第20条
育児・介護のための短時間勤務
事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が利用できる短時間勤務制度(1日の所定労働時間を6時間とする措置を含む制度)を設け、また要介護状態の対象家族の介護を行う労働者が当該家族1人当たり利用開始の日から3年の間で2回までの範囲内で利用できる短時間勤務等の措置(短時間勤務制度、フレックスタイム制、時差出勤の制度、介護サービスの費用の助成等の制度のうちいずれか1つ以上)を設けなければならない。
関係法令等:育児・介護休業法第23条
有期契約労働者(期間を定めて雇用されている労働者)の育児休業
- 引き続き1年以上雇用されている(更新されている場合を含む)こと
- 子が1歳6か月に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
お父さんの育児休業
- 母親だけが育児休業を取得する場合の休業期間は、子が1歳に達するまでですが、父親も育児休業を取得すると、子が1歳2か月に達するまでの間、休業可能となります。
- 育児を行える配偶者がいても、育児休業の対象から除外することはできません。
- 子どもが生まれて8週間以内に育児休業を取得した場合は、再度育児休業を取得することができます。
- 産後8週間は母体を保護するための期間です。その期間に父親が育児休業を取得して、母子のそばにいて育児を行うことは家族の一体感を強めます。その後、母親が仕事に復帰する際に再度育児休業を取得すれば、妻の職場復帰を支援することができ、子どもの負担を軽くすることもできます
パートタイム・有期雇用労働者の差別的取扱いの禁止
事業主は、正社員と職務の内容及び配置等が同じと判断されるパートタイム労働者及び有期雇用労働者については、賃金をはじめとしてすべての待遇について、パートタイム労働者又は有期雇用労働者であることを理由として、差別的に取り扱うことが禁止されている。
※令和2年4月1日から「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され(中小企業における適用は令和3年4月1日)、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。また、事業主は短時間・有期雇用労働者から求めがあった場合に、短時間・有期雇用労働者に対して、正社員との待遇差の内容、その理由について説明することが義務化されました。
関係法令等:パートタイム・有期雇用労働法第9条
パートタイム・有期雇用労働者から正社員への転換
事業主は、パートタイム労働者及び有期雇用労働者から正社員への転換を推進するため、必要な措置(①正社員を募集する際、その内容を雇用するパートタイム労働者・有期雇用労働者に周知する、②正社員のポストを社内公募する場合、パートタイム労働者・有期雇用労働者にも応募の機会を与える、③正社員へ転換するための試験等転換制度の導入、④教育訓練等転換を推進するための措置、のいずれか)を講じなければならない。
関係法令等:パートタイム労働法第13条
女性の活躍推進のための一般事業主行動計画
301人以上の労働者を雇用する事業主は、①自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、②状況把握・課題分析を踏まえた「一般事業主行動計画」の策定・社内周知・公表、③労働局への届出、④女性の活躍に関する情報の公表が必要である。
また、行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な企業への認定があります。
※改正女性活躍推進法が施行され、令和4年4月1日より、上記①~④の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されました。
関係法令等:女性活躍推進法第8条~第11条、第16条
次世代育成支援のための一般事業主行動計画
101人以上の労働者を雇用する事業主は、仕事と子育てを両立しやすい雇用環境の整備等を進めるための「一般事業主行動計画」の策定、労働局への届出及び外部への公表・従業員への周知が必要である。(100人以下の労働者
を雇用する事業主については努力義務)なお、行動計画を策定・届出し、一定の要件を満たすと、労働局長の認定(「くるみん認定」)を受けることができる。このくるみん認定を受けた企業のうち、特に次世代育成支援対策の実施状況が優良な企業は「プラチナくるみん認定」を受けることができる。
関係法令等:次世代育成支援対策推進法第12条~第15条の4
健康と安全労働
安全衛生管理体制
事業場の規模、業種に応じて安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者の選任が必要である。(また、適切に選任し、職務を行うこと)
関係法令等:労働安全衛生法第11条、12条、12条の2
産業医の選任
常時50人以上の労働者を使用する事業場は産業医の選任が必要である。
関係法令等:労働安全衛生法第13条
作業主任者の選任
ボイラーの取扱い作業など、労働災害を防止するために管理を必要とする作業で作業主任者を選任することが必要な作業がある(適切に選任し、職務を実施させること)
関係法令等:労働安全衛生法第14条
安全・衛生委員会
事業場の規模、業種に応じて安全委員会、衛生委員会、または安全衛生委員会を設置し、会議を開催する必要がある。
関係法令等:労働安全衛生法第17,18,19条
SDS
労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物(通知対象物)を提供等する場合には、文書交付等で通知しなければならないことなっている。(また、文書交付し、対象物の成分、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意、応急処置、などについて理解すること)
関係法令等:労働安全衛生法第57条の2
特別教育・職長教育
アーク溶接作業など、危険又は有害な業務で省令で定めるものに労働者を就かせるときは特別の教育を、また、指導・監督する者には、職長教育を行う必要がある。
関係法令等:労働安全衛生法第59、60条
就業制限(技能講習など)
クレーンの運転等政令で定める業務には技能講習修了者等の有資格者でなければ就かせてはならない。(有資格者の配置が適切か、随時確認すること)
関係法令等:労働安全衛生法第61条
作業環境測定
岩石や金属の粉じんを発散する場所など政令で定める有害な業務を行う屋内作業場については、作業環境測定を行わなければならない。(作業環境測定を行い、その評価の結果に基づく措置を適切に行うこと)
関係法令等:労働安全衛生法第65条
一般健康診断・特殊健康診断
常時使用する労働者については一般健康診断を、有機溶剤を用いて行う塗装作業など政令で定める有害な業務に従事する労働者には、特殊健康診断を行わなければならない。(それらの健康診断を実施した場合、その結果、有所見と判断された者について医師等の意見を聴き、その意見に基づき事後措置を行うこと)
関係法令等:労働安全衛生法第66条、66条の4、66条の5
健康診断記録の作成
健康診断を実施した場合には、健康診断の結果を記録しておかなければならない。
関係法令等:労働安全衛生法第66条の3
高年齢者の労働確保
高年齢者の雇用確保措置(1)
事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならない。
関係法令等:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第8条
高年齢者の雇用確保措置(2)
65歳未満の定年を定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引き上げ又は継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかの措置を講じなければならない。
関係法令等:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条
障害者の労働確保
障害者雇用率(1)
民間企業、国、地方公共団体は、次の割合に相当する数以上の障害者を雇用しなければならない。①民間企業⇒2.2%(45.5人以上規模企業)、②国、地方自治体、特殊法人⇒2.5%(40人以上規模機関・法人)、③都道府県等教育委員会⇒2.4%(42人以上規模機関)
関係法令等:障害者の雇用の促進等に関する法律第38条、第43条
障害者雇用率(2)
国では毎年6月1日現在で障害者の雇用状況報告を提出させ、法定雇用率の未達成事業主等に対して、ハローワークが関係機関と連携のうえ助言・指導を行うほか、改善が認められない場合は、最終的に企業名の公表を行っている。
関係法令等:障害者の雇用の促進等に関する法律第46条、第47条
雇用分野における障害者に対する差別禁止
全ての事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならず、また、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
関係法令等:障害者の雇用の促進等に関する法律第34条及び第35条
雇用分野における障害者むに対する合理的配慮の提供義務
全ての事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害特性に配慮した必要な措置を講じなければならず、また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は、障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。
関係法令等:障害者の雇用の促進等に関する法律第36条の2から第36条の4
ハラスメントのない職場
パワハラ、セクハセ、マタハラ対策
事業主は、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントやセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント防止のための必要な措置(①事業主の方針の明確化(ハラスメントの内容や行為者に対する処分内容について就業規則に規定する等)及び周知・啓発②相談窓口の設置等相談対応のための必要な体制整備、③事実関係の確認等事後の迅速かつ適切な対応④プライバシー保護措置・不利益取扱いを行わない旨の明確化等)を講じなければならない。
関係法令等:男女雇用機会均等法第11条、第11条の2 育児・介護休業法第25条、労働施策総合推進法第30条の2
解雇・退職等の離職に関するもの
解雇等に関する各種規制
解雇理由の妥当性
労働者を解雇する際、解雇理由について客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効と判断される。
関係法令等:労働契約法第16条
解雇予告制度
労働者を解雇する場合、30日以上前に予告する必要がある。
(予告期間が30日に満たない場合は、足りない日数分の平均賃金を支払う必要がある)
関係法令等:労働基準法第20条
解雇理由の証明
労働者から退職の場合や解雇予告を受けた際に解雇理由など法定事項について証明書を請求された場合、遅滞なくこれを交付しなければならない。
関係法令等:労働基準法第22条
雇止め基準
有期労働契約(有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続雇用されている労働者に限る)を更新しない場合、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに予告しなければならない。
関係法令等:有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止
女性労働者の妊娠・出産、産前産後休業の請求・取得等を理由とする解雇やその他不利益取扱い(期間雇用者の雇止め、退職強要、非正規労働者への身分変更の強要、減給又は賞与等の不利益算定等)は禁止されている。また、妊娠中・出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、その理由が妊娠等によるものではないことを事業主が証明しない限り無効である。
関係法令等:男女雇用機会均等法第9条
育児・介護休業、子の看護休暇等の不利益扱い禁止
育児・介護休業、子の看護休暇等育児・介護休業法に定める両立支援制度の申出・取得等を理由とする解雇やその他不利益取扱い(期間雇用者の雇止、退職強要、非正規労働者への身分変更の強要、減給又は賞与等の不利益算定等)は禁止されている。
関係法令等:育児・介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第16条の7、第16条の9、第16の10、第18条の2、第20条の2、第23条の2
離職の各種届出
雇用保険資格喪失
離職などにより労働者が雇用保険の被保険者でなくなった時は、その翌日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届及び同離職証明書を管轄ハローワークに提出しなければならない。
関係法令等:雇用保険法第7条、雇用保険法施行規則第7条
再就職援助計画
事業主は、事業の縮小等により1ヵ月に常時雇用する労働者30人以上を離職させる場合には、1ヵ月前までに再就職援助計画を作成し、管轄ハローワークの認定を受けなければならない。
関係法令等:労働施策総合推進法第24条、労働施策総合推進法施行規則第7条の2、第7条の3、第7条の4
大量の雇用変動の届出
事業主は、事業縮小の有無を問わず1ヵ月に常時雇用する労働者30人以上を離職させる場合は、最後の離職の1ヵ月前までに管轄ハローワークに大量離職届を提出しなければならない。
関係法令等:労働施策総合推進法第27条、労働施策総合推進法施行規則第8~9条
障害者の解雇届
事業主は、障害者を解雇しようとする場合は、速やかに管轄のハローワークに障害者解雇届を提出しなければならない。
関係法令等:障害者の雇用の促進に関する法律第81条、同法施行規則第41~42条
中高年齢者の多数離職届
事業主は、45歳以上の中高年齢者を5名以上離職させる場合は、最後の離職の1か月前までに管轄のハローワークに多数離職届を提出しなければならない。
関係法令等:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第16条、同法施行規則第6条の2
求職活動支援書の作成
事業主は、45歳以上の中高年齢者が解雇等により離職する場合で対象者が再就職の支援を希望する場合は、求職活動支援書を作成し対象者に交付しなければならない。
関係法令等:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第17条、同法施行規則第6条の3
[ご注意とお願い]
冒頭にも記載しましたが、法律は改定されます。毎年とは言えませんが、社会通念や情勢により大小の法改正があります。ここ数年では、「働き方改革」「受動喫煙防止」「ハラスメント」などが大きい改正だと思いますし、職場健康増進に関わるものもあります。細かく言えばきりがないのですが、法律に関わるものは「知りませんでした」と済むものではありません。常に、アンテナを張っておかなければならないものですし、複雑すぎて理解できないものもあります。
そのために、社会保険労務士や弁護士と顧問契約を結びますがそれはある程度のレベル法人です。私たちのような個人ではコストがかかります。そのような場合、どうすれば良いかをインターネット検索で調べて勉強して自ら対応しなければなりません。
しかし、ネット検索はすべてが正しいとは限りませんし、費用がかかるものもあります。検索しても基本知識が必要ですし、理解できないものもあります。
私がPCのことが全く分からないのと同じだと思います。そのような方に少しでもお役立ちできて、ヒントでも差し上げられたらと思っております。
このコンプライアンスも全体の一部ですし、間違いもあると思います。間違いがあればご指摘いただければ修正をいたします。
記:桃太郎
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